電動マイクロモビリティを通して魅力的な街づくりを目指す(株式会社Luup)

エコで先進的な電動マイクロモビリティのシェアリングサービス
株式会社Luupは、電動キックボードと電動アシスト自転車などの電動マイクロモビリティのシェアリングサービス「LUUP」を提供するスタートアップ企業です。事前にダウンロードと登録を済ませたスマホのアプリを使用し、街じゅうに設置された「ポート」から車両を借り、目的地のポートに車両を返却する仕組みです。利用料金は基本料金50円(税込)+時間料金1分あたり15円(税込)で、通勤や通学時10分前後の短距離移動によく利用されています。
現在、東京、横浜、大阪、京都など全国12都市を中心にサービスを展開中で、ポート数は12,000箇所超、電動キックボードと電動アシスト自転車の数は合計30,000台以上を運用中です。2020年のサービス開始以来、移動手段として便利なだけでなく、エコで見た目もスタイリッシュなことから利用者は増加中で、アプリのダウンロード数は10代から70代まで400万を突破しています。
取締役CFO 兼 経営企画室長の向山哲史さんは次のように語ります。
「『歩くには遠いけれど、電車やバス、タクシーでは行きづらい』という場所への移動時に大変よくご利用いただいています。弊社の最初のサービス開始エリアが渋谷区だったこともあり、利用者はほとんどが若者というイメージがあるかもしれませんが、ご年配の方にも数多くご利用いただいています。将来的には、三輪や着座式の電動マイクロモビリティの開発も進めていく予定です」

人々が自由に移動できる次世代インフラを作る
もともと日本の都市は鉄道の発達とともに開発されてきた歴史があり、その線路沿いにある駅を中心に同心円状に街が形成されてきました。必然的に駅前にマンションやオフィス、商業施設などが集まり、駅から徒歩数分圏内の土地は価値が上がり、駅から徒歩離れると価値が下がる構造となっています。
この点について、向山さんは「日本の人口が減少しつつある現代において、大量輸送を前提とした交通手段である鉄道だけに頼った街づくりは、果たして最適といえるのでしょうか」と指摘します。
そして、次のように続けます。
「これからの時代に求められるのは、もっとライトな車両で自由に移動できる社会です。弊社のポートを『ミニ駅』として街じゅうに設置することで、誰もが、いつでもどこにでも自由に移動できる未来を構築できると考えています。そのような思いで、弊社は『街じゅうを「駅前化」するインフラをつくる』をミッションに掲げています。弊社を『電動マイクロモビリティの会社』とご認識いただいているかもしれませんが、実は我々としてはそのようには思っておらず、あくまでもLUUPで街や人々が抱える移動課題を解決し、移動した先の街の魅力の再発見や、街づくりを経営の重要課題としているのです」
また、言うまでもなく電動マイクロモビリティを使用することは、人の移動に伴うCO2の排出量を大幅に低減することに貢献しています。例えば自動車に比べ、電動キックボードと電動アシスト自転車は、人を1km移動させるのに必要なCO2の排出量が約40分の1となっています。2023年4月の1か月間では、人々が既存の交通手段からLUUPに乗り換えることで削減できたCO2の排出量は50トン以上になりました(※1)。
さらに同社では、2023年からより環境負荷の少ない走行を実現するため、使用する電力を全て再生可能エネルギー由来のものに変更、加えてJ-クレジットを取得することで、走行時の消費電力を実質的に全てCO2フリーとしました。
また、車両を丁寧にメンテナンスすることで、1台の車両を長く使い続けることにも注力しています。同社はメンテナンスの体制を万全にすることで世界的に最長水準の車両使用期間を目指しています。
この点について、向山さんは次のように説明します。
「アメリカやヨーロッパでは、最近になって収益も考え2~3年は使用する傾向にありますが、それまでは半年や1年で車両を廃棄していることもあったと聞いています。それに対して弊社は、2021年からサービスを開始した電動キックボードを、定期的にメンテナンスすることで現在までほとんど廃棄せずに使用することができています。これらの取組含め、弊社ではサービス全体で環境負荷を最小限にすることを目指しています」
(※1)株式会社Luupの試算による

鉄道会社や自治体と連携して街づくりを進める
同社では、LUUPを活用した魅力的で住みやすい街づくりを目指して多くの企業や自治体、団体と連携しています。向山さんは次のように語ります。
「例えば、鉄道会社様との協業では、電車やバスが走るエリア全体の価値を上げるため、鉄道会社様を動脈とすると、弊社は毛細血管のような役割を果たすべく、ポートを至る所に設置していく取り組みを進めています。また、放置自転車が課題となっている地域においては、ポートを設置することで街の景観や安全性を保つなど、サステナブルな街づくりに向けたお手伝いをさせていただいています。SDGsに当てはめれば、弊社の事業活動は、産業と技術革新に関わる目標9や、住み続けられる街づくりに関わる目標11とリンクしていますが、特別に意識しているわけではなく、弊社が目指しているものがもともとそれらと合致していたという認識です」
グリーンローンと東京都の補助金を活用
同社は昨年、電動キックボードや電動アシスト自転車の購入費用として、三井住友銀行をアレンジャーとする協調融資団を貸付人に、15億円のグリーンローンを調達しました。これは、企業や自治体が国内外のグリーンプロジェクト(環境問題の解決などに取り組む事業)に要する資金を調達するために用いる融資です。グリーンローンを調達するには、通常のローン組成に必要な手続きに加え、グリーンプロジェクトの評価や選定プロセスの検討、見込まれる環境改善効果の算定などの手続きが必要になります。株式会社Luupは株式会社日本格付研究所(JCR)から「グリーン性」「管理・運営・透明性」「総合評価」の全てにおいて最高評価を受け、その評価をもとにグリーンローンの調達に至りました。また、この評価費用の補助金として、東京都が都内の中堅・中小企業を対象に交付する「サステナビリティ経営促進事業補助金」を活用しています。
向山さんはこれらの制度について「スタートアップ企業は積極的に活用すると良いのではないでしょうか」と語ります。
「今回、弊社がグリーンローンを活用することにしたのは、そもそも事業活動自体が環境問題の改善を内包するものでしたので、資金調達もそれに紐づけした形が良いのではないかと考えてのことです。また、JCR様に評価をいただければ、本事業の環境に対する価値もより伝わりやすくなるのではないかとも考えました。対外的な面でも、レンダー様から環境面を意識した経営をしているとの認識をしていただけることはプラスになります。
こうしたグリーンローンも東京都の補助金も、弊社のような中小企業の事業活動を後押ししていただける貴重な制度です。しかし、社会的な認知度はまだそれほど高くないと思いますので、環境価値を意識して経営されている会社様にもっと知っていただき、ご活用いただけると良いなと思います。
特にスタートアップ企業は、こうした行政の制度や銀行様が用意している枠組みを意外と知らないことが多いと思いますので、もっと知って積極的に活用していくことを選択肢の一つにしても良いのではないかと思います。
弊社もグリーンローンを活用し、今後も街を活性化する次世代インフラを作り続けていきたいと思います」

会社概要
社名:株式会社Luup
所在地:東京都千代田区佐久間町3-21-24 AKIHABARA CENTRAL SQUARE 4階
創業:2018年
事業内容:電動マイクロモビリティのシェアリングサービス「LUUP(ループ)」の提供
代表取締役CEO:岡井 大輝
従業員数:約140名(2025年3月現在) ホームページ:https://luup.sc/