今、取り組んでいる事業がSDGsにつながる
(株式会社不二製作所 )

代表取締役社長 杉山 博己 様

事業ありきでも可能なSDGsへの貢献

不二製作所は、国内トップクラスのシェアを誇る「エアーブラスト装置」の専業メーカーです。そのグレードの高さは世界屈指といっても過言ではなく、実際、国外にも市場を広げています。

エアーブラスト装置とは、圧縮した空気の力で研磨材を高速噴射することにより、対象物の表面を加工する装置のこと。同社では、多様な顧客の多様なニーズに合わせたエアーブラスト装置を設計、製造、販売しており、それらはスマートフォンから航空機まで幅広い分野で使われています。納入先には、各分野のリーディングカンパニーが名を連ねていることからも、同社が各方面から大きな信頼を得ていることが見て取れます。こうした事業内容とSDGsとの関連性について、杉山社長は次のように話します。

「エアーブラスト装置の使用用途は多岐にわたります。一例になりますが、エアーブラスト装置を使って被加工物の表面を粗すことで塗料や接着剤との密着性を高めたり(下地処理)、金属加工の過程で発生してしまう不要な突起や残留物を取り除いたり(バリ取り)することができます。こうした技術が、お客様が抱える課題の解決・改善につながり、それがSDGsにつながっているとして評価いただいています。つまり、下地処理が製品寿命を延ばすことにつながったり、被加工物を傷めないバリ取りの技術が製品の品質向上のみならず作業時間の短縮・効率化につながるといった具合です。SDGsのために新しい事業を始めたり、社内リソースを過度に割いたりすることはせず、従前より取り組んでいた主要事業が『どう社会課題の解決に貢献するか』ということを改めて考え、お客様、従業員と対話をすることがSDGsへの一歩であると考えています」

本社工場社屋のロビーにてブラスト装置の説明をする杉山社長。なお、社屋の外壁や柱にも特殊なブラスト加工が施されている。
(不二製作所様よりご支給)近年、好評を得ている大型のルームタイプブラスト装置。独自の循環システムで作業中の視認性向上につなげるとともに、ケレンと呼ばれる下地処理のグレードも最上級に引き上げている。さらに、低床、研磨材回収が自動であるなども、省力化やコストダウンに繋がっている。

顧客の課題がSDGs寄りの傾向に

不二製作所の経営理念の中に『企業は顧客の期待する満足価値を、整備し提供することにより成長発展するものである』との一文があります。同社の事業内容とSDGsの親和性の高さは、この経営理念にもヒントがありそうです。

「お客さまが何に困っているのかを追求し、そこにある課題を当社の技術で解決し、お客様に満足していただくことが私たちの仕事です。要するに、当社のビジネスは、そもそもがソリューションビジネスなのです。つまり、難しい課題に直面したときほど、私たちにとってのビジネスチャンス。したがって、ここで『当社ではSDGsに取り組んでいます!』と公言するのは、やや気恥ずかしいというのが本音です(笑)。ただ、近年、お客様が抱える課題がSDGsにリンクしている傾向にあるため、当社でその課題を解決することがSDGsへの取り組みにつながるということは大いにあります」

例えば、金属鋳物に付着した鋳砂(いずな)を除去するために、化学薬品を使用する洗浄方法(コリーン処理)。これは環境に対する負荷も高く、作業者の安全面や健康面にも影響があるため、SDGsに対して意識の高い企業の担当者ほど、この部分を課題とします。不二製作所のエアーブラスト装置による洗浄なら、環境をクリーンに保ちながら、安全かつ短時間で、さらには確実に洗浄できるとあって、各方面で重宝されています。また、コリーン処理と比較してランニングコストを大幅に削減できることもメリットです。

(不二製作所様よりご支給)こちらはコリーン処理からエアーブラスト自動機による処理に切り替えたことによって、年間1800万円のコストダウンが出来たお客様事例です。コリーン処理では、ガス代などの間接材料費や廃液処理等で高額な費用が掛かりますが、エアーブラスト自動機では、労務費を大幅削減し、更に廃液処理等も不要なことから、ランニングコストを大幅に下げることが可能です。

自社の強みを生かしてSDGsに取り組む

顧客満足度の追求が、結果としてSDGsにつながったと話す杉山社長ですが、未来に向け、SDGsを踏まえた具体的な取り組み目標と手段も掲げています。

例えば、SDGsの17あるゴールの「8:働きがいも経済成長も」に対しては、「2030年までに受注100億円、従業員500人体制の構築」と目標を掲げています。実現に向けた手段としては、多くの分野で課題となっている人手不足や、ディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)の推進の一助になるような自動機の研究・開発を進めていきたいとのこと。そのためには、不二製作所で働く一人ひとりの能力や働き甲斐を高めていく必要があることから、人事制度に工夫を凝らしたり、外部組織による働きやすさや働き甲斐に関するアンケートを実施し、適宜、改善に努めているそうです。2017年のデータによると、前年度育児休暇取得・復帰率は100%、また、休暇をとりやすいと考えている社員の割合は85%となっており、ライフワークバランスの実現に向けた取り組みが数字にも表れています。

「9:産業と技術革新の基盤を作ろう」に対しては、「既にSDGsの達成に役立っている案件の受注をさらに増やしていく」と目標を掲げています。具体的には、ブラスト技術を駆使し、前述のような環境負荷の高い化学的処理からシフトしていけるような案件の受注に注力していくとしています。ほかにも、被加工物に特殊な研磨材を噴き付けることで摩擦抵抗を低減し、潤滑油を使わずに(滑りやすさ)を高め、燃費の良さ(省エネ)を実現したり、被加工物表面の耐摩耗性や疲労強度を高めることで製品寿命を延ばすような案件の受注にも積極的に取り組むとしています。

「企業の本質は、自社の強みを生かしながら、いかに世の中の役に立てるかだと思っています。これはSDGsに取り組む上でもいえることで『自分の会社がどうすれば社会の役に立つか』を追求していけば、自ずとSDGsやESGにつながっていくのではないでしょうか。最近、当社では『(本社がある)江戸川区で憧れの企業になろう!』を合言葉にしています。実現までの道のりはまだだいぶありますが、まずは、この『東京サステナブルNavi』のサイトに掲載されたことを、全社員に周知し、SDGsについて学びつつ、自分の会社を誇りに思う一つのきっかけにしてもらえたらうれしいですね」

会社概要

社名:株式会社不二製作所
所在地:東京都江戸川区松江5-2-24
創業: 1950年
設立: 1959年
事業内容: エアーブラスト装置の設計・製造・販売など
代表取締役社長: 杉山博巳
従業員数:326名(グループ会社を含む)
ホームページ:https://www.fujimfg.co.jp/