SDGsで未来の扉を開ける。
(日本サニパック株式会社)

日本サニパック株式会社 代表取締役社長 井上充治様
日本サニパック株式会社 代表取締役社長 井上充治様

「社員が誇りを持てる会社」をSDGsで実現する

日本サニパックは、高品質なゴミ袋やポリ袋を製造・販売する伊藤忠グループのメーカーです。創業50周年となった2020年を「DX元年」と位置付け、以来、SDGs型経営を柱に据えた次世代型ビジネスモデルの構築に取り組み、2021年には、CO₂排出量の削減に寄与する環境配慮型ゴミ袋「nocoo(ノクー)」を発売しました。SDGsを経営の軸に据えた理由について、井上充治社長は「世界的なプラスチックバッシングが契機になりました」と述懐します。

「海に漂うプラスチックゴミの誤食が原因で海洋生物が死亡しているという報道がなされて以来、プラスチックは世界中で悪者扱いされるようになっています。弊社が自社工場を置くインドネシアでも、プラスチックゴミを食べる牛の姿が写真に収められ反響を呼びました。どちらもプラスチックを主原料とするゴミ袋のメーカーである当社の存在価値が問われる事態で、社内には、当社の事業に自信を持てなくなった社員もいたようです。従来の経営の延長線上ではいずれ事業が立ち行かなくなるとの危機感から、社員が誇りを持てるような会社を目指し、『自分たちはどうありたいか』を社員とともに議論しながら考え始めました。社会やステークホルダーから評価されることはもちろん大切ですが、それは結果論に過ぎず、前提として大事なのは自分たちはどうありたいかです。『将来のありたい姿』を思い描き、そのために何が必要かを議論した結果、SDGsを軸とした次世代型ビジネスモデルへの変革を打ち出しました」

使うほどにCO₂削減効果が高まるゴミ袋を新規開発

レジ袋有料化の例からもわかるように、社会では脱プラスチックや反プラスチックの動きが加速しており、プラスチックを主原料とした商品を製造する日本サニパックには逆風が吹いているといっても過言ではありません。日本サニパックはこの風潮に真正面から向き合い、日本サニパックとして何ができるか、自社の明るい未来を切り開くにはどう行動すべきか検討し、「中長期目標として2030年にプラスチック使用量を半減し、CO₂排出量を40%削減する方針を打ち出すと同時に、企業理念とロゴの一新に踏み切りました」と、井上社長は力を込めます。

「社員が誇りを持てる会社になるために『清潔で快適に暮らすためのソーシャルインフラになる』ことをミッションに掲げ、SDGs型経営とCO₂削減を柱に据えました。具体策として、当社の商品をすべて環境配慮型商品に切り替えることを決め、この方針が『nocoo』の 開発につながっています。『nocoo』は、『No CO₂』をもじったもの。ユーザーに意識調査を実施したところ、環境問題で最も意識されているのは地球温暖化であることが判明したため、CO₂の削減に寄与する商品の開発を進めた経緯があります。ゴミ袋は焼却が前提の商品ですから、焼却時にCO₂をいかに削減できるかが重要です。そこで原料に天然ライムストーン(炭酸カルシウム)を使用し、プラスチック使用量とゴミ袋の製造・燃焼時のCO₂排出量を大幅に抑えることに成功しました。環境配慮型商品は高価になることが常ですが、価格を上げたことで消費者から背を向けられてしまっては本末転倒ですから、『nocoo』は従来品と同等の価格で提供しています。結果、使う人が増えるほど環境保護効果が高まる商品になったと自負しており、現在では多くの既存顧客や自治体に採用いただいています」

『nocoo』は、『No Co2』をアレンジしたもの

すべての商品を環境配慮型商品に

メーカーがSDGsや環境対応に取り組む際、対象を主力商品以外に限定することが多いようです。なぜなら原材料の変更に付随するコスト増などを鑑みると、主力商品に注力することは経営的なハードルが高くなるからです。しかし日本サニパックは『nocoo』を主力商品として位置づけ、すべての商品を環境配慮型商品に切り替えていくことを目指しています。これは同社の本気度を示していると言えるでしょう。実際、同社ではサスティナビリティ実現を強力に推進していくため『SDGsオフィサー』という組織横断的な推進リーダーを新設し、日高真由美氏が就任して社内の旗振り役を務めています。その他の取り組みとして、サプライチェーンを詳細に分析し、分散している情報をシームレスにつないで、様々な情報を『見える化』することによる新たなビジネスモデルの創出にも努めています。

「DX推進、トヨタ生産方式やデジタルマーケティングなどの導入を進めているほか、SDGs型経営の採用では、いわゆる『17の目標』をいたずらに事業活動へ当てはめるのではなく、SDGsの観点からバリューチェーンに沿って『プラス』と『マイナス』の影響をそれぞれ社員が評価し、具体的なアクションに落とし込む作業を進めています。『17の目標』を、取り組む優先度が『高い課題』と『低い課題』に切り分け、最終的に抽出された高優先課題をもとにさらに議論を重ね、今後の具体的な取り組みとして経営戦略や事業戦略に実装していく予定です」(井上社長)

「サスティナビリティの実現に向けた弊社の取り組みは、順風満帆だったわけではありません。当初はSDGsやDXに関心が薄い社員もいました。そこで、どうすれば全員が興味を持って能動的に関わってくれるのか試行錯誤を繰り返して実践してきました。社外の有識者を招いたセミナーを企画したりワークショップの内容を充実させたりするなど、『楽しんで参加できる』工夫を重ねてきたことが今につながっています」(日高SDGsオフィサー)

社員研修で使用した資料(一部抜粋)
社員研修で使用した資料(一部抜粋)

SDGsを通じて一人ひとりが大きく成長

SDGs型経営の推進で日本サニパック社内に様々な好影響がもたらされたといい、井上社長は「良いことずくめだったように思います」と目を細めます。

「全社員参加型のプロジェクトとすることで、社内に様々な『輪』ができましたし、とかく悪者にされがちなプラスチックを扱う企業で働く人間として事業の持続性や成長性、将来性を模索していく中で、社員全員が会社や事業、そして環境について『自分事』として考えることができるようになるなど、一人ひとりが大きく成長したと実感しています。『東京サステナブルNavi』は、SDGsに関心を持っている中小企業にとって頼りになる情報源で、自社と共通の課題を抱えている企業の事例に触れることで気づきが得られるはずです。弊社がその一助となれば嬉しく思います。もっとも、弊社の取り組みもまだ道半ば。高価になりがちな環境配慮型商品は消費者に受け入れられにくいという話をしましたが、今後は情報発信や啓蒙活動に取り組みながら、環境配慮型商品が消費者に受け入れられやすい風土の醸成にも力を入れていく所存です。それが実現できれば、地球環境だけでなく日本サニパックの持続性も自ずと高まっていくに違いありません」

会社概要

社名:日本サニパック株式会社
所在地:東京都渋谷区幡ヶ谷一丁目25番5号
設立: 1970年
事業内容: ポリエチレン製ゴミ袋、食品保存袋、水切り袋、紙製ゴミ袋の製造・販売など
代表取締役社長: 井上充治
従業員数:87名
ホームページ:https://www.sanipak.co.jp