達成可能な目標を掲げ、SDGsに地道に取り組む
(株式会社ユカ)

株式会社ユカ 代表取締役社長 星名 浩治様

親和性が高い「CSV経営」と「SDGs」

株式会社ユカ(以下、ユカ)の主たる事業は、自動販売機(以下、自販機)による飲料・食品の販売や卸です。コロナによる売上減はあったものの、1973年の創業以来、ほぼ右肩上がりで売上を伸ばし、現在では首都圏と関西圏に15事業所を展開しています。従業員数は720名、管理している自販機の台数は2022年末で約4万8000台と、都市部にお住まいの人々の便利な暮らしに役立っています。

2023年に創立50周年の節目を迎え、100周年に向けた新たな50年を踏み出すタイミングで、同社は、CSV経営(事業を通じて社会課題を解決することで、自社の経済的利益を目指す経営のこと)とSDGsの取り組みを同時に推進していくことを、社の方針として打ち出しました。この背景について、星名社長は次のように話します。

「当社は、基本理念において、「お客様本位」を主軸とし、「自動販売機を通して、お客様のお手伝い(コンサルティング)をしたい」という熱意と、「私たちの使命は、お客様の立場に立ったサービス体制を作り出すこと」という手段で、「『街にオアシスを生み出すこと』それが私たちの仕事です」とうたっています。ひいては「自販機を通じたサービスで、お客様の困りごとや社会課題を解決する一助となること」をモットーとしていることから、当社が目指すCSV経営とSDGsとの親和性は高いと考えた次第です」

自販機とペットボトルを通じた取り組み

一口に自販機と言っても、その種類はさまざまです。同社では、飲料メーカー6社の売れ筋商品ばかりを取りそろえた「オリジナル機」や、通常価格のナショナルブランド商品と低価格商品を混合することで110円からの販売を可能にしている「ドリームベンダー」のほか、コンビニエンスストアの取扱商品であるお弁当、おにぎり、サンドウィッチなどを、自販機の設置スペース(例:オフィス、駅、高速道路パーキングエリアなど)に合わせて厳選できる無人コンビニ(オートマチック・スーパー・デリス)などを取り扱っています。同社では、こうした自販機やペットボトルを通じて、現在、主に3つのSDGsに取り組んでいます。

「1つ目が『ドリンクDeオフセット』です。これは、自販機の収益の一部をカーボンオフセット(※)に充当するというもので、オフセットプロバイダーの関連子会社シンテンとのパートナーシップで展開しています。2030年までに『ドリンクDeオフセット』の100契約により、年間1,000トンのCO2排出量実質ゼロ化を目指しています」
(※)カーボンオフセットとは、個人や企業、イベント等から排出されるCO2を、他の場所で削減したCO2とオフセット(相殺)し、地球環境的には中立(ニュートラル)状態に戻すという考え方

ドリンク De オフセットのしくみ

「2つ目が『B to B (ボトルtoボトル)』の取り組みです。これはペットボトルをリサイクルして、再びペットボトルとして使用することで循環型社会の実現を目指すというものです。2030年までに年間4,000万本の「B to B」を目指します」

「3つ目が『デザイン自動販売機』です。これは自販機にラッピングを行うサービスで、限定のオリジナル飲料などと合わせたコラボレーション自動販売機など様々な拡がりが期待できます。
実際に当社では、立川観光コンベンション協会様、株式会社KADOKAWA様とのパートナーシップにより、『とある』シリーズのアニメデザイン自動販売機を、立川市の各所で展開しています。自販機そのものを観光資源化することで、聖地巡礼に訪れるファンの皆さんに楽しんでいただきつつ、その地域における賑わいの創出のお手伝いをさせていただいています」

デザイン自販機の写真

女性活躍の推進を2024年問題対策の1つに

なお、同社従業員の6割強(458名)が「自動販売機オペレーター」の業務に就いています。いわゆる「ルートセールス」と呼ばれる仕事で、具体的には、トラックで自販機が設置されている場所を巡回し、商品補充、自販機清掃、空き缶の回収などを行っています。都市部の道路は混雑していることも多く運転しづらかったり、エレベーターが無い場所では重い商品を持って階段を昇り降りするなどハードな仕事ですが、現在9名の女性が働きがいを持って、このルートセールスの仕事に就いているそうです。

働き方改革関連法で定められる時間外労働の上限規制は、2024年3月末で猶予期間が終了となり、同年4月から適用となるため、物流運輸業界では深刻な人手不足をはじめとした多くの課題(2024年問題)に直面するといわれています。

「当社も例外ではなく、すでに人手不足です。そうした中、ルートセールスの仕事を含め、女性の採用を増やすことは、当社の事業継続にとって非常に重要なことです。業務の内容がハードな分、健康経営も意識しながら、これまで以上に適材適所で女性従業員も活躍できる職場にしていきたい考えです」

コンサル会社やセミナーを有効に活用

ユカでは、他にも災害対策自販機(災害時に自販機内の商品を無償提供する他、自販機横に設置されているトラッシュBOXに、災害時用の簡易トイレや、救助活動に必要なハンマーやバールなどの工具一式を収納する災害備蓄も提供可)や、防犯対策自販機(自販機に防犯カメラが付いている)を設置することで、災害に強く、安心できるまちづくりにも貢献しています。こうしたSDGsにつながる活動に取り組む上で、心がけていることを、星名社長は次のように話します。

「取り組みの成果を出すためには、まずは、社員やお客様が『この取り組みはいいね』と、ポジティブに思えることが重要です。そして、掲げる目標は低すぎても高すぎてもよくありません。少し努力をすれば達成できそうな目標を掲げ、その進捗を数値化して、努力している全員で共有していくことが大切なのだと思います。今の進捗度合いを100とするなら、102とか103でいいと思います」

また、具体的に、何に取り組めばいいのかわからない企業様向けに、星名社長は次のようなアドバイスをくださいました。

「当社も最初は不勉強で、SDGsに取り組む意欲と大枠の考えはあるものの、何をすればいいのかわかりませんでした。そこで、日本総研さんに相談し、当社の事業内容を隅々まで分析いただきSDGsにつながる事業を洗い出していただいたんです。SDGsには17の目標があり、それぞれにとても具体的な目標が示されていて、その数は169もあるわけですから、当社がそうであったように、どの企業様にも『これならできる!』という該当項目が必ずあるはずです。したがって、第三者の専門家に入っていただくのもいいと思います。あとは、SDGsに取り組む企業同士のつながりが増えると、アイデアに幅が出ると思うので、当社としても、東京都さんが開催するセミナーなどに積極的に参加していきたい考えです」

災害対策自販機

会社概要

社名:株式会社ユカ
所在地:東京都目黒区南2丁目1番30号
創業: 1973年
事業内容: 自動販売機による飲料・食品などの販売
代表取締役社長: 星名浩治
従業員数:720名(2023年9月30日現在)
ホームページ: https://www.yukanet.co.jp/