大栄不動産株式会社様
(連携金融機関:みずほ銀行)

東京都は、都内中堅・中小企業の経営をサステナビリティに配慮したものへと転換を促すため、連携金融機関が取り扱うサステナビリティ・リンク・ローン(SLL)の実行にあたり、必要となる費用の一部を支援しています。

この度、本補助を活用し、サステナビリティ経営に取り組まれている「大栄不動産株式会社」様に取材してきましたので、その様子をお伝えします!

東京都

貴社事業について教えてください。

大栄不動産
石村社長

大栄不動産は1950年創業、2020年に70周年を迎えた伝統をもつ総合不動産会社です。旧埼玉銀行(現りそな銀行)の系列不動産会社として設立されて以降、地域に根付いた不動産事業を展開し、埼玉県を中心に強固な経営基盤を築いてきました。

大栄不動産
石村社長

現在はその確かな実績を原動力に、首都圏ほか主要地方都市などにもフィールドを広げると同時に、オフィスビルを核とするビル事業から、パーキング事業、住宅事業、不動産仲介のほか、老人ホームや大規模産業団地の開発、市街地再開発など、時代の変化や社会の要請に応える不動産事業に積極的に取り組んでいます。

東京都

貴社のSDGs、ESG、サステナビリティに関する取組を教えてください。

大栄不動産
石村社長

当社グループでは、企業理念である「社会に貢献し、お客様に必要とされる存在であり続ける」の実践を通じて、財務面だけではなく、本来の役割である「社会への貢献」を見える化して、多様なエンゲージメントを引き出していくことが、当社グループの価値向上に繋がるものと考えています。

大栄不動産
石村社長

このため昨年度に「サステナビリティ・ビジョン」を制定しました。不動産のプロフェッショナルとして、事業を通じて、大栄不動産らしいさまざまな新機軸を創造し、社会と暮らしの、持続的可能なよりよい未来を実現していきたいと考えています。

大栄不動産
石村社長

当社は2050年に100周年を迎えます。これからも地域・社会・お客さまとの「相利共生」を目指し、「優れたチームワーク」と「豊かな経験」で、ステークホルダーとともにさまざまな活動に挑戦していきたいと考えています。

東京都

上記の取組に関して苦労されたことや、取組をしてよかったことはありますか?

大栄不動産
石村社長

当社は非上場会社ですが、有価証券報告書を提出しており公募債も発行しています。企業のこれからを考え、サステナビリティ経営(=経営戦略にサステナビリティの視点を取り入れて企業価値向上を図るとともに、社会課題解決に貢献する)を実践していましたが、全社的な取り組み推進、全社員の更なる意識向上が大切であると考え、2021年4月に「SDGs推進委員会」を設置しました。委員会は私が委員長となり、各部より若手社員も推進委員に任命し、全社的な取り組みを進めてきました。

大栄不動産
石村社長

2022年3月には、サステナビリティ経営をより一層推進するための機関として、「SDGs推進委員会」を「サステナビリティ推進委員会」に改組しました。「サステナビリティ推進委員会」は、サステナビリティ推進に関する①方針・計画等の企画・立案、②社内推進体制の構築・整備、また、③実績管理や情報開示等の審議を行い、定期的に経営会議や取締役会に付議・報告しています。

大栄不動産
石村社長

「サステナビリティ推進委員会」の構成員には各部門の部門長(=担当役員クラス)が新たに加わりましたので、サステナビリティ関連のリスクと機会を管理するためのガバナンス・プロセスの中核と位置付け、新たなコーポレートガバナンス体制を構築することができました。

大栄不動産
石村社長

また、「サステナビリティ推進委員会」の取り組みを通じて、「2030年度までにCO排出量(原単位ベース)を30%削減(2013年度比)する」という当社としてのサステナビリティ目標を具体的に設定することが出来ました。

東京都

サステナビリティ・リンク・ローン(SLL)をご調達されたと伺います。何か理由はありましたか?

大栄不動産
石村社長

2020年の後半から、取引金融機関から「今後の企業経営においては、気候変動によるリスクやチャンスなどの影響を考慮し、気候変動の影響を想定した経営戦略を立てていくことが重要なテーマになっていること」や、その推進に必要な資金調達方法である「サステナブル・ファイナンス」のメニューなどについてアドバイスや提案を受ける機会が増えてきました。

大栄不動産
石村社長

その中で、大きくは、(1)グリーンプロジェクトに対するファイナンスと、(2)サステナビリティ目標を設定し、目標の達成度と借入条件が連動する資金使途に定めのないSLLというファイナンスの二つがあることが判りました。

大栄不動産
石村社長

「サステナビリティ推進委員会」においては、各部門で「今」「自分達で」出来る取り組みのアイデア、施策は色々出てきましたが、サステナビリティの具体的な数値目標はなかったことから、これを機にサステナビリティの数値目標を設定して、SLLの調達にチャレンジしてみようということになりました。

大栄不動産
石村社長

SLLを導入することによって、当社がサステナビリティ経営にしっかり取り組んでいることを、社内だけでなく取引金融機関やステークホルダーの皆様にも知って頂ける機会になると考えました。

東京都

どのような目標を立てたましたか? また、その目標を立てた背景についても教えてください。

大栄不動産
石村社長

SLLによる調達を行うためには、サステナビリティ目標と連動したサステナビリティ・パフォーマンス・ターゲット(SPTs)を設定することが必要でした。
サステナビリティ目標は、当社のマテリアリティ(重要課題)における主要な取り組みである「環境負荷の低減」から当社の主軸事業であるビル事業における「CO排出量の削減」としましたが、SPTsが合理的であるかどうか、サステナビリティの目標として有意義であるかどうか、またその数値目標が野心的で意欲的な目標設定になっているかどうか、について、外部の格付機関から第三者意見を取得する必要がありました。

大栄不動産
石村社長

また、設定したCO削減目標に対しては毎年CO削減実績を測定して報告しますので、社内でしっかり測定する体制を構築しなければいけないですし、測定のプロセスと結果については、外部専門家による検証を受ける必要がありました。

大栄不動産
石村社長

CO排出量を削減することは、そう簡単ではありません。既存のビルを環境改善効果の高いグリーンビルに一気に建て替えるのであれば別ですが、限られた経営資源を有効に活用しながら建て替え等を進めていく計画をシミュレーションして、2030年度までにCO排出量を30%削減するSPTsを設定しました。

大栄不動産
石村社長

目標数値だけを見ると政府目標や他社の目標との比較では低い目標設定とはなりますが、今後、並行して新規でのグリーンビルの取得や建替計画の前倒しも予定しているため実際には更なる削減を見込んでおります。そのあたりは格付機関にもご理解を頂いたと思っています。

東京都

SLL調達をきっかけに始めてみたいことを教えてください。

大栄不動産
石村社長

現在、板橋区の成増で、ビルの建替を進めていますが、建物は環境に配慮した設計施工としており、環境認証は「ZEH-M Oriented」で、BELSの5つ星の評価を得た建物(店舗・賃貸レジデンス)です。建築資金25億円については、3月にグリーンボンド(公募債)の発行を行い、資金調達をしています。

大栄不動産
石村社長

今後ともサステナビリティ推進に関するプロジェクトにおいてはサステナブル・ファイナンスの導入に積極的に取り組み、環境負荷の低減にとどまらず社会課題の解決に取り組んでいきたいと思います。

東京都

サステナブル・ファイナンスについて何かご意見はありますか?

大栄不動産
石村社長

SLLを導入して一番感じることは、サステナブル・ファイナンスは財務という一部門のマターではなく、サステナビリティについての全社的な理解と実践がなければ成し得ないものであるということです。単なる資金調達の一手法だけでなく、サステナビリティ経営を推進する原動力にもなると思います。

東京都

今回、東京都の補助金を申請したきっかけや、良かったことを教えてください。

大栄不動産
石村社長

SLLを提案してくださった取引銀行のみずほ銀行様からSLLの提案と合わせて、第三者機関の外部評価にかかる費用に対して東京都が補助金制度を行っていることを教えていただきました。
偶々、みずほ銀行様が東京都のサステナビリティ経営促進事業で連携している銀行でしたので良かったと思います。
今回、100万円の補助を頂けるのですが、サステナブル・ファイナンス導入を後押ししてくれる大変ありがたい制度だと思います。

東京都

SDGs、ESG、サステナビリティ経営に関して自治体や金融機関に期待することはありますか?

大栄不動産
石村社長

事業会社がサステナビリティ経営を進めていく中においては、旧来のやり方と比べて諸々コストアップとなることが往々に出てきます。サステナブルな持続可能な社会を作り上げていくためには社会を構成する一人一人、一社一社のサステナブルな取り組みの積み重ねが大切だと思います。
自治体や金融機関には、是非その取り組みをサポートする仕組みや制度を充実していただきたいと思いますし、またそういったサポートや支援の制度があることを、広く周知していただければありがたいです。

東京都

これからSDGs、ESG、サステナビリティ経営に取り組む企業へのメッセージ等あれば教えてください。

大栄不動産
石村社長

■「サステナビリティ経営を推進していくために大切だと思ったこと」 です。

経営トップのリーダーシップ「我々もSDGsをやるぞ!」

全員が参加する、参画意識をもつこと

「案ずるより産むが易し」今出来そうなことをまずはやってみること

大栄不動産
石村社長

■若手社員からの生の声です。

当社では、社長からが常々、社員一人一人が常に自発的に「考え」「行動」していくことで、「強い個の力の集合体」となり、より良い会社、組織になっていくことを教わっています。

新たな時代に向かっていくためには若手社員の発想や意見に耳を傾けることが大切だと考えてくださっているので、若手社員が中心となって新卒採用活動に取り組んだり、サステナビリティ推進委員会にも若手社員もメンバーとして参加しています。

昨年、社長から「社員が自席や給湯室以外にリフレッシュしたり、他部署の社員ともコミュニケーションが出来るような空間、スペースを創ってみよう」とのお話をいただきました。

令和に入り、コロナ禍を経て企業を取り巻く環境・社会はニューノーマルに突入しています。DXの進展、SDGsやサステナビリティの浸透など新たな時代に適応していくために、「よりクリエイティビティが高い個人(個)の集団、多様性を受け入れる柔軟な組織が必要」という経営トップの考えからのお話でした。

お話を受けて、若手社員が空間のコンセプトから、インテリア、カフェコーナーに置くコーヒーや紅茶のブレンドに至るまで様々にアイデアや意見を出し合いました。また実際に壁や机のペンキ塗りまで自分達で行い、本社4階に「よんカフェ」という空間・スペースを創りました。

本社ビルは、建物は「平成」、内部はやや「昭和」のレトロ感もあるオフイスでしたが、その一部ですが社員がコーヒーを片手に会談する「令和」なスペースを全て一から作り上げることができました。 若手社員は知識も浅く、会社に貢献することはまだ限られているかもしれませんが、もらった仕事をただこなすのではなく、「失敗を恐れずに挑戦できる」という当社の環境や雰囲気を最大限に活用させてもらって会社も自分自身も成長していきたいと思います。

若手社員がアイデアや意見を出し合って創った「よんカフェ」
コーヒーや紅茶のブレンドも若手社員のアイデア
流行りのソファも取り入れ、「令和」なスペースになっている
大栄不動産
石村社長

■私が社員に今、言い続けていることです

 「受け身になるな、自ら動け!

 「やれるまでやろう、妥協に陥るな!

 「評論家より行動する人になれ!

 「変化を恐れるな!

東京都

お忙しいところ貴重なお話をありがとうございました。

大栄不動産株式会社 事業紹介

ビル事業(主軸事業)

首都圏を中心に、63棟のビル賃貸を行っています。オフィスビルをはじめ、倉庫・ホテル・マンションなどを運営しており、加えて、新規物件の取得や既存ビルの建替え等を通して保有資産のポートフォリオの強化を図るとともに、大規模再開発事業にも参画しています。

パーキング事業

首都圏を中心に、799ヶ所・17,094車室の月極・時間貸し駐車場の運営・管理を行っています。その広範なパーキング事業の経験とノウハウは、大型商業施設や病院などの駐車場・駐輪場の企画立案・受託管理業務などにも活かされています。

住宅事業

自社ブランド「ブリリアンコート」シリーズをはじめ、様々なタイプのマンションの開発から分譲までをトータルに手掛けています。大手デベロッパーなどとの共同事業や、中古マンションのリノベーション事業などにも注力しています。

不動産営業

不動産仲介・CRE戦略支援・産業団地開発・買取再販・不動産鑑定などの業務を行っています。長きにわたり築き上げた地域との強力なネットワークを活かし、総合不動産会社として多様なニーズに応えるソリューションを提供しています。また、昨年には不動産のインカムゲインとキャピタルゲインの最大化、バリューアッドに取り組む専門部署を新設しています。

老人ホーム事業

埼玉県熊谷市に、リタイアメントビレッジ「グリーン フォレスト ビレッジ」を展開しています。約3万㎡の敷地に、アクティブシニア向けの「楓コート」、要介護の方向けの「桜ガーデン」の2棟を擁する高齢者向け施設です。
(運営:グループ会社「グリーンフォレストケア株式会社」)

補足

・1950年11月、埼玉銀行店舗ビルの開発、所有および賃貸を目的として(株)八重洲口ビルディング設立。初代社長は埼玉銀行の元頭取、山崎嘉七が就任しました。

・1958年12月、(株)池田建築事務所および(株)埼玉ビルディングと3社合併し、商号を「大栄不動産(株)」に変更し、総合不動産会社としてスタートしました。初代社長には大川鉄雄(埼玉銀行の前身である武州銀行の初代頭取、尾高次郎の子で、日本の製紙王と呼ばれた大川平三郎の養子となりました。渋沢栄一の孫にあたります。)が就任しました。

会社概要

社名     :大栄不動産株式会社
所在地    :東京都中央区日本橋室町1丁目1番8号
創業     :1950年11月7日
事業内容   :ビル賃貸事業・駐車場事業・住宅事業・不動産営業事業・有料老人ホーム事業
代表取締役社長:石村 等
従業員数   :179名(2022年3月31日現在)
ホームページ :https://www.daiei-re.jp/