三者に喜びをもたらす事業でwin-win-winを実現~現地も日本も事業者も~ (株式会社FrankPR)

株式会社FrankPR 代表取締役 松尾 真希 様

快挙! 社員2名の零細企業が「ジャパンSDGsアワード」を受賞

株式会社FrankPRは、「お客様とともにSDGs達成を目指す」をコンセプトに、皮革製品や雑貨の製造・販売を通して「貧困を無くそう」「ジェンダー平等」などSDGsの10のゴールの達成に取り組んでいる企業です。中でもバングラデシュのシングルマザーらの雇用を支援している革製品ブランド「Raffaello(ラファエロ)」の製造と提供を通じた活動が高く評価され、2021年に環境省主催の「第9回グッドライフアワード」で実行委員会特別賞を受賞。2023年には、SDGs達成に向けて優れた取り組みを行っている団体を政府が表彰する「第6回ジャパンSDGsアワード」で外務大臣賞も受賞しました。社員数たった2名の超零細企業がこのような権威ある賞を受賞するのは異例で、快挙と言っても過言ではありません。

ジャパンSDGsアワードを受賞

代表を務める松尾真希氏が「サスティナビリティ」に興味を持つようになったのは、創業前のアメリカ留学時のこと。現地の大学で、環境や文化を保護しながら開発を進める手法である「都市地域計画」を専攻し、SDGsの前身に相当する「MDGs(ミレニアム開発目標)」についての見識を深めたと言います。留学を終え帰国したのは東日本大震災が発生した2011年。松尾氏は、アメリカで学んだ知識を被災地の復興に活かしたいとの思いから、被災地に足を運び、サステナブルな都市地域計画について力説するも、当時は「サスティナビリティって何?」と受け入れられず、歯がゆい思いをしたそうです。「どんなに優れたアイデアやコンセプトがあったとしても、それを主張するだけでは説得力がないことを学びました」と松尾氏は当時を振り返ります。

サスティナビリティを理解してもらうには、具体的な商品やサービスの提供が必要だと気づいた松尾氏は、そうした事業を立ち上げるために行動を開始します。「夫がかねてからレザーブランドを手掛けたいと考えていたこと、バングラデシュでは大学にレザーテクノロジーについて学ぶ学部があるほど、国をあげて皮革産業に注力していることを知り、まずはバングラデシュを訪問して現地を見て回ることにしました」と松尾氏。

実際に訪れたバングラデシュで、松尾氏はいくつかのカルチャーショックとも言うべき経験をします。一つは、バングラデシュがアジア最貧国であると知ってはいたものの、目の当たりにした極貧困層の暮らしぶりに大きなショックを受けたこと。二つ目は、アメリカの大学で学んだ影響から「牛革製品=悪」という先入観を持っていた中で、バングラデシュでは『犠牲祭』(イスラム教の祝祭)で生贄として捧げられた牛の皮を無駄に捨てるのではなく、革製品に加工して産業化していることを知り、「これもサスティナビリティの一つの形」と気づきを得たこと。三つ目は、バングラデシュでは女性の社会的地位が著しく低く、働くことさえできずにいることを知ったことです。こうした経験が、レザービジネスのノウハウが豊富なバングラデシュで、現地の女性を雇用して革製品を製造するというアイデアになり、日本で販売することで、バングラデシュの貧困問題の解決につなげることを思いついたといいます。

「牛革製品は耐久性が高く、長持ちすることからサスティナビリティと相性が良いことも、レザービジネスを事業化する決め手になりました」と松尾氏。こうして、事業を通じて社会課題を解決するべく、松尾氏夫妻は2014年10月に革製品ブランド「Raffaello」を立ち上げました。ブランド名はルネッサンス期の三大巨匠の1人で、画家で建築家のラファエロ・サンティに由来しています。そこには、商品に芸術性を持たせることで、商品の付加価値を上げ、消費者のSDGsに対する理解や関心の有無に関係なく、「購入したくなる商品をつくる」との決意にも似た、松尾氏の願いが込められています。

シングルマザーを積極的に雇用し、社会問題の解決に貢献

今では「ラファエロ」と検索窓に入力すると、検索候補に「財布」と出てくるほど、一定の地位を築いた同ブランドですが、そこに至るまでには苦労もありました。最初に立ちはだかった壁は、バングラデシュにおける女性の地位が低いために、女性である松尾氏もまた、現地で製造や取引の商談をする際に、なかなか取り合ってもらえなかったことです。

「バングラデシュでも、やはり“想い”や“熱意”だけではうまくいかないことを痛感しました。そこで、弊社ブランディングマーケター 兼COO である夫の菊池友佑とも相談し、私たちの話を真摯に受け止めてくれる人を増やすには、『Raffaello』の販売増を達成して現地への発注量を増やし、当社の認知度やプレゼンスを高めるしかないとの結論に至りました。菊池が商品プロモーションの手腕に長けていたこともあり、ブランドの立ち上げから2年が過ぎた2016年、大手ECサイトのセールで1つの革財布を1日3000個弱も 売ることができた んです。それに伴い現地工房へのオーダーを増やせるようになって、ようやく私たちの話に耳を傾けてくれる人たちが出てきました。女性を積極的に雇用してほしいという要望も通るようになり、今では、経済的に苦しいシングルマザーを中心に女性従業員は約400人います」と松尾氏は笑顔を見せます。同社は、障がい者支援にも取り組んでおり、現地企業と提携し、製品の検品作業で身体障がい者を積極的に雇用しています。さらには、日本国内でも、シングルマザーを中心とした数十名の女性スタッフに在庫管理や顧客対応を業務委託しています。

工房で働くシングルマザー
職人と松尾代表

消費者も「偉大なパワー」を持っていることを知ってほしい

商品がヒットし現地工房への発注量が急増した経験を踏まえ、松尾氏は「サスティナビリティの実現に、消費者はすごく大きなパワーを持っていることにあらためて気づかされた」と話します。

「大半の購入者が『良い商品だから手に入れたい』という思いで購入してくださっているはずです。それがいいんです。純粋に欲しいと思うものを購入し、それが結果的に、最貧国の女性の就労支援や生活改善に役立つのであれば、力むことなくSDGsに取り組めますし、そのほうが続きますから。また、当社が高品質な製品づくりにこだわることは、現地の女性たちが『革職人』としてどこへ行っても活躍できるだけの高いスキルを身につけることにもつながり、本当の意味での女性の雇用、ひいてはSDGsの『ジェンダー平等の実現』にもなります。実際、現地で雇用している女性たちからは、『働いて得た収入で電化製品を買うことができた』『子どもを大学に進学させることができた』といった声が寄せられています。一方で、『ジャパンSDGsアワード』という権威ある賞をいただいたときには、多くのお客様から『購入して良かったです』という感想をいただき、私も心の底から嬉しくなりました」

職人の高い技術力が生きる革財布。スフマートで商標登録することで職人の技術を保護している。

同社の事業は、現地の女性たちに「働いて収入を得る喜び」と「生活が豊かになる喜び」をもたらし、日本の消費者には「本当に欲しいものを手に入れる喜び」と「自分の消費行動が誰かの役に立っている喜び」をもたらし、さらには松尾氏夫妻にも「思い描いていたことが叶う喜び」をもたらしているのです。

FrankPRが実践するSDGs

まずは会社とその関係者を「幸せ」にすることから

最後に、経営にSDGsを取り入れたいと思っていても最初の一歩が踏み出せなかったり、何から手をつけるべきかわからなかったりする事業者に、松尾氏からアドバイスをいただきました。

「SDGsの目的は持続可能な経済成長を進めることで、企業の存在目的も利益を創出して半永久的に活動を続けていくことにあります。その意味で、両者の目的は同じだと思うんです。SDGsの達成に向けた取り組みは、どこか遠くにあるものではなく、会社に対する愛着の延長線上にあると捉えるのが良いと思います。どんな事業を展開すれば、自分を含めたステークホルダー全員が幸せになれるのかを日ごろから考えるようにすれば、自ずとSDGsに取り組む上でのスタートラインに立てるのではないでしょうか。最初から世界全体を明るくしようと意気込むのではなく、まずは自分の会社とその関係者の未来を幸せにすることから始めればいいと思います。同時に、『東京サステナブルNavi』のような企業事例や助成金の情報が掲載されているサイトも参考にすべきです。10年前にこのサイトがあったらよかったのに、と心から思った次第です」

会社概要

社名: 株式会社FrankPR
所在地: 大阪府大阪市西区京町堀1-13-20メゾンド京町堀701
創業: 2018年
事業内容: SDGs達成を推進するハイエンド革製品ブランド「Raffaello」の製造小売
代表取締役: 松尾真希
従業員数: 2名(2024年1月31日現在)
ホームページ: https://www.frank-pr.jp/
SDGsの知恵袋: https://franksdgs.com/
Raffaelloホームページ:http://raffaello-craftsman.com/